ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
「そのちょっとだけ、が、ずっと私を振り回してますけれど」
「知ってる。だから、ちょっとだけをやめて、全部にしようと思ってるんだけど」
「……どういう事ですか?」
「今にわかるって」
しれっと言ってのけるコウさんは、やっぱりずるいと思った。
「裕香ちゃんのお父さんは大学の准教授、お母さんはピアノの先生だったよね?
うちも母はピアノ教室の講師をしていた。
だから俺もある程度は弾けるよ。
……小6の途中まで、ずっと母に習っていたから」
お母さんがピアノの先生だったのなら、もっと続けていてもおかしくないと思うけど。
「それ以降は、辞めちゃったんですか?」
言ってから、はっとした。
確かコウさんのご両親は、早くに亡くなったって……。
普段より低い声で、でもはっきりとコウさんが言った。
「父と母が、その年に死んだ。
……俺が、2人を殺したも同然だったよ」