ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~

「どうして、ですか?

どうして、お母さんまで……?」


「だ捕されたことによって、保釈金の支払いと乗組員の生活保障をしなくてはならなくなった。

さらに、船と家のローンもまだ残っていたんだ。

船をロシアに取り上げられた父が、それだけの金を払える保証はどこにもない。

だが、今まで一緒に働いてくれた乗組員への保障だけは、何としても払うつもりだったらしい。

……それで、二人分の生命保険が充てられた。

母にとっても、生きて行くのが辛すぎたんだと思う。

今思うと鬱の状態だったが、人目を気にして病院にも行かなかった」


コウさんがまた、目を伏せた。


「両親がいなくなった俺は、そのまま児童相談所へ連れて行かれて、隣の市にある児童養護施設で生活することになった。

昔で言うところの『孤児院』だけど、本当の『孤児』は当時でも珍しかったよ。

大抵はひとり親家庭で、何らかの事情があってそこにいるような子どもばかりだった」




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