ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
コウさんが、ソファから立ち上がって、動き出した。
リビングの隅にある、FAXが置かれた台の小さな引き出しを開けると、そこから取り出したのは、あの青い巾着袋。
それを手に取って、また、ソファへ戻ってきた。
「児童養護施設には、毎日のように誰かの肉親が面会に訪れる。
でも、俺には面会に来てくれるような親族はいなかった。
父方の祖母は亡くなり、祖父ももう高齢で、面会には来られない。
母方の祖父母は……生まれてから会ったこともない。
父との結婚に猛反対だったらしくて、母は駆け落ち同然で父の元へ嫁いだらしい。
そんな時、俺に初めての面会人が来たんだ。
……この袋を持って」
昨日の夜、これを見ようとして「ゴミと間違われる」なんて言っていたけれど。
やっぱり、コウさんの大切なモノだったんだ……。
「来てくれたのは、乗組員の『ノムさん』だった。
父が一番信頼していた仲間で、俺もよく遊んでもらったよ。
そのノムさんが、父の形見だと言って、これを持って来てくれたんだ」