ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
「俺もこの船には、よく乗せてもらったよ。
小さな漁船だったけれど、父親が船長だっていうのが嬉しくてさ。
父の跡を継いでこの船で漁をしようって思ってた」
コウさんは、私が持っていた巾着袋の中から、鉄のかけらを取り出した。
懐かしそうにそれを眺めて、目を細める。
「白地に青のラインが入った、当時としてはいいエンジンを積んだ船だった。
だから、境界線ぎりぎりのところで漁をしていたのかもしれない。
海の上で、自分の腕を過信してはいけない。
油断してはいけない。
境界線を越えていなかったとしても、だ捕されてしまったらもう……。
『罪を認めて謝る』しかなかったんだ」
最後の方の言葉は、コウさんがまるで自分自身に言い聞かせているようだった。
これまで語られたコウさんの過去。
ひとつだけ気になったことがある。
お父さんの船の話をしている時だけ、コウさんの気持ちがストレートに伝わってきたけれど、後の話は何だか客観的すぎた。
淡々と事実のみを語ったコウさんの心情と、その表情に現れていたのは。
客観的にならなければ耐えられないほどの、苦痛と怒りと悲しみだった。