ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
また、おでこをこつんと合わせてきた。
キスされるのかな、と一瞬期待したのに、ただ黙って私を見つめるだけのコウさん。
どうしていいのかわからず、固まる私の耳に囁かれたのは。
「アレグロ……いや、ヴィヴァ―チェ、かな。
そんなに緊張する?」
深みのある、落ち着いた声。
こんな時にも落ち着いていられるコウさんと、何も知らない私の経験値の差を思い知らされつつ。
「え?」
突然、速度記号の話が出てきたので、反射的に楽譜とAllegroの文字が頭に浮かんだ。
コウさんの腕が、緩むと同時に。
背中に回されていた手が、左の胸に置かれて、我にかえる。
「こんなにドキドキさせているのは俺のせいかと思うと……興奮する」