少数派の宴
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<トカゲ>が小荷物を持って“魔女ババァ”の家に戻ると、既に<煙草屋>は運転席に収まっていた。
老婆と何やら話している。
先程は良く見なかったが、車は高級なオープンカー『だった』ようだ。
今はあちこちが傷付いていて、履き古された靴が思い起こされた。
<トカゲ>は後部座席に山と積まれた機械類を見て、助手席に滑り込んだ。
とたんに<煙草屋>が振り向く。
「乗るな」
何を、と問う間もなく、
ピリリリリ
とくぐもった着信音が流れた。
<トカゲ>は慌てて尻の下の携帯電話を取り出す。
しかし<煙草屋>はそれに出る気配もない。
そのうち電子音は止んでしまった。
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