少数派の宴
事故。凄惨な事故。
舞台が回るように、車内は一変した。
見た事がないような激しい振動、不安感を煽るどこかからの悲鳴、舞い散るガラス片。
しかし、一番異様なのはフロントガラスに――――そして男の首へ――――刺さった巨大な金属。
車の外から容赦なく、大きなナイフのように。
「う……」
<トカゲ>は死と混乱の雰囲気に呑まれそうになる。
ぎぃ、と嫌な音がPCから流れ出た。
車に刺さったナイフが動き、また抜かれようとしている。
その時、球状の何かが窓から飛び出していった。
<トカゲ>はそれが何かと思いを巡らせ、やめる。
しかし動画は止まらなかった。
想像の通りに、次に映ったのは首の断面。
<トカゲ>は血の気が引くのを感じる。
「これが、」
悔しい事に、顔色一つ変えず<煙草屋>が言った。
むしろ、どこか誇らしげにさえ見える。
「蜥蜴だ」
ぬ、と。
赤ん坊の頭部が断面から生えた。
そして<トカゲ>とは比べ物にならない位の早さで成長していく。
「な……に……」
最後にPCの中で、にやり、と完璧に再生した男は笑った。
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