「のーたいとる。」*アンパンマン恋愛バージョン


どんなに探しても見つからない。

どうでもいいときには必ずといっていいほど街で悪さをしている、というのに今日は静かだ。

夜中だからかもしれない、目立ちたがり屋の彼は昼間に悪さをするのだ。

今の時間は計画を成功させるために秘密基地にいる、といった時間だ。

しかし、秘密基地にも彼はいなかった。


途方にくれていると、オレンジ色の彼女の頬(ほお)を伝う物があった。

白いヒーローの背中にそれがぽたり、と落ちる。

ゆっくりと高度を下げて森のなかに入っていく。

真っ暗な世界で泣いている生き物が独り。

「ばいきんばん…………」

「見つかりますよ。安心してください。大丈夫ですから」

「大丈夫、だよね、しょくぱんまん様……」

「はい。きっと見つかります」

森の中で、じっとしていることもできず。オレンジ姿の彼女は叫んでしまった。

「ばいきんまぁぁぁぁぁぁぁんッ!」


森の中で声がこだまする。あちらこちらから自分の声だけが響き渡っている。

狂いそうになってしまった。

もう、何も聞きたくなかったのだった。

耳を塞(ふさ)いでぶんぶんと頭を振る。

そんなときだった。

聞きなれた、あの声が。遠くから確かに聞こえたのだった。

自分を呼ぶ、嗄(しゃが)れ声。

「しょくぱんまん様! あっちよ!」

「私にも聞こえました、行きましょう!」



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