「のーたいとる。」*アンパンマン恋愛バージョン
開けっ放したまま、黒い姿の彼は出て行った。
これから準備をしなければならない。
「果たし状」を成功させるためにも。愛する彼女のためにも。
とにかく、できることはやらなければならないのだ。
UFOに乗って彼は街までやってきた。
人間の住まないこの土地では幼い「何か」が所狭しと遊んでいる。しかし。
空から見えたその存在たちは、黒い姿の彼を見たとたんに泣き出すのだった。
ばいきんまんがやってきた、と口々に騒ぎ立てながら蜘蛛(くも)の子を散らすようにどこかへ行ってしまう。
そんなことにも慣れていた。
愛するものがいれば、それでいいと思っていた。しかし、今は。
食料を売っている店に入る。店員の顔が凍りついた。
無視をしてカートに食料を入れていく。たくさんの食料が詰め込まれる。そして、レジの前に立った。
「……なんのつもりなの、ばいきんまん」
「なんでもねえよ。はっひっふっへっほー!」
「お金は持ってるの?」
「金は無いがイイものをやろう! 俺様のとっておきだ!」
一旦外に出てUFOからロボットを持ってきた。
店員の前でスイッチを入れると、ロボットはカナリアの声を出して「いらっしゃいませ」と言い出した。
丸いフォルムのロボットは辺りを見渡すと、自動的に掃除を始めたのだった。
「どうだ? これはいいものだろう」
「でも、何か企(たくら)んでるんじゃ…………」
「企んでるとも! 俺様だぜ?」
「いたずらはいけないよ?」
ありがとうございました、という声を聞きながらUFOに戻った。
これでしばらくは食料の心配をしなくてもいいだろう。
そう考えた黒い姿の彼は、UFOに乗って果たし状に書いていた約束の場所にやってきた。
「あいつなら、きっと来る。はっひっふっへっほー!」