「のーたいとる。」*アンパンマン恋愛バージョン
見てみると、全員が納得している様子の顔だった。
オレンジ姿の彼女を受け入れる用意はできているらしい。
オレンジ姿の彼女は発汗と高鳴りを抑えることができずにいたのだった。
白いヒーローが続けて言う。
「部屋は私と一緒の部屋にしましょう。共同生活です。いいですか?」
「ぜひとも! 夢のようだわーッ!」
「それでは、これからよろしくお願いいたします。どきんちゃん」
にっこりと微笑む白いヒーロー。オレンジ姿の彼女はうっとりとしてしまうのだった。
これから夢のような、そんな生活が待っていると思うと、どうしても現状を信じることができないのだった。
誰も覗(のぞ)かないシャワールームで、思い出すのは黒い姿の彼の言っていた言葉だ。
夢を叶えてやる、と言われた。
それが現実となった。
すぐにお礼を言いたくなったのだが、今は会えない。
それに、憧れのヒーローとの共同生活、邪魔をされたくはなかったのだ。
きゅっ、と栓(せん)を閉めてシャワールームから出てくる。
白いヒーローが明日使う自分の頭の生地をこねているところだった。
「手伝いますよっ、しょくぱんまん様ぁ!」
「あっ、いいですよ、休んでて下さい」
オレンジ色の少女が構わずに生地に手を伸ばし、こね始めると細菌がうつっていくようで、カビが生え始めた。
慌(あわ)てて手を引っ込めたのだが、もう遅い。
「ごめんなさい……」
「まあ、しょうがないですね。気持ちだけ受けとっておきます」
「でも、明日ばいきんまんが悪さをしたら…………」
「それはないですよ」
「……どうして?」
「あっ、なんでもないです」
疑問に思ったのだが、黒い彼にだって準備はあるだろう。
いつもやられて敗北を喫(きっ)しているのはそれなりに理由のあることだろうし、攻めてくる時期が悟られていたからかもしれない、と思うと妙に白いヒーローの言葉が信用できるのだった。
それから、オレンジ色の彼女と白いヒーローの二人の共同生活が始まったのだった。