愛してるさえ、下手だった



――「旭」

いつも横で微笑みながら俺の名前を呼んでいた「あいつ」。
名前は、有芽(ユメ)。

大学で同じ学部だったことで知り合った俺たちは、すぐに惹かれあった。
側にいることが普通だった。
互いが互いの一部となるぐらい、いつも一緒にいた。

有芽の声はとても透明で澄んでいて、俺はその声がとても好きだった。

その声で名前を呼ばれるたび、自分の名前がとても特別なものに思えた。


「旭、愛してる」

好きなものは好きと言う彼女の素直さが愛しかった。
俺にはないものに惹かれた。

「大好き」


いつも俺はその言葉を一身に受けてきた。
口にはしなかったけれど、俺も有芽のことを愛していた。

大学を卒業したら結婚しようと、2人で笑いながら話し合っていた。


本当に、幸せだった。


< 56 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop