恋の教習所
50分――――――


高校の授業は長く感じた。


でも・・・谷川教官の学科50分は全然時間を感じない。
むしろもっと聞いていたいかもしれない。

周りを見ても、教習生も下を向いて寝ていることはない。


視線を自分に釘付け。

凄い・・・・・。


私もいつかはそうなりたい。





キーンコーン カーンコーン



あっという間の50分が終わりを告げた。

あぁ~あ、終わっちゃった。

「じゃあ、教習原簿はこの机に置いておきます。ミッションの人は廊下側、オートマの人は窓側ね。」

ハンコを押した原簿を二つに分けて。
指示した机に置いていく。


なるほど。
最初から分けてあげていたら、親切だし自分のを見つけやすい。
こういった心配りが出来るところも人気の一つなんだろうな。

笠井君と私も自分の教習原簿を取りに行こうとしたら・・・。


「はい。お疲れ様。」

谷川教官が私たちの所まで持って来てくれた。

「ありがとうございました。」

先に笠井君が受け取って

「ありがとうございました。やっぱり谷川教官の学科、わかりやすいです!」

私も自分のを受け取った。


「いや、まさかとは思っていたけど、入ったらほんとに二人がいるからさ。ちょっとカッコイイ先輩やろうと頑張ってみたら、人数ミスった。」

はははって笑っている谷川教官。

「でも、わかりやすいのは本当ですよ!!」

私は慌てて口を開けた。

「ありがと。また、わからない所あったら聞きにきてよ。協力するから。」

いつもの笑顔で。

そんなこと言われたら・・・もっと勉強しようっていう気になるじゃん!

お礼を言って谷川教官とは別れた。


“人数のミスなんて関係ないくらいカッコイイです。”

やっぱりまだ私には言えなさそう。
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