ため息に、哀

薄暗くてわかりづらかったけど、よく見たら、それは知っている人物だった。

名前はたしか・・・・。


「ゆるせない、あの茶髪のチャラい男。あたしの亜美ちゃん先輩を、よくも、よくもっ!」


漫画のキャラみたいに悔しそうに指をかんでいる仕草が妙にハマっている。

小さなローファーが、忌々しげに足元の土を踏み荒らしている。


なんだか非常に機嫌が悪そうなので、触れないに越したことはない。

そう思ってそっとその場を去ろうとしたとき、その人がキッとこちらを見た。



「あなたっ! 男バスですねっ」

「は・・・・はい・・・・・」


残念、捕まってしまった。



「あたしの亜美ちゃん先輩をたぶらかしてたのも、男バスですねっ」


瞬間移動したかのごとく、一瞬で俺との間合いを詰めて、大きな瞳で睨んできた。

でも頭一つ分俺よりも身長が低いその人は、上目づかいで俺を見つめているようにしか見えない。


正直、ドキッとした。

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