ため息に、哀
「どっちでもいいんです!
それよりもスズキくん、あたしお願いしてたのに! 亜美ちゃん先輩に、野蛮な男子部のケモノたちが必要以上に近づかないようにガードしてって」
さっき薄が呼んでいて、やっとこの人の名前が長谷川さんだということがわかった。
長谷川さんは俺と同じ二年生で、女子バスケ部に入っている。
ちっちゃくて可愛くてふわふわしてて天真爛漫そのものだけど、内面がこんな風にちょっとおかしいもんだから、二年生の間では少し有名だ。
「あの人は長谷川さんの大好きな高橋先輩が選んだ人なのに、その人に長谷川さんが文句つけるんだ? 高橋先輩、悲しむと思うなあ」
やけに薄が楽しげにしているのが気になって、落ち着かなかった。
どうしてだろう。
まさか、薄をとられて寂しいとか?
いやいやそれはない、ありえない。