ため息に、哀

「ガーン! あたしのせいで亜美ちゃん先輩、悲しむの? それはダメっ」


長谷川さんは怒りの表情を一瞬で塗り替えて、全身でショックを表している。

コロコロ表情がかわるし、打てば響くっていうのかな、とにかく面白い。

薄がからかいたくなるのもわかる。



「でも亜美先輩をとられたくないんだもんっ! ねっ、わかるでしょ、この気持ち」


長谷川さんはいきなり振り向いて、俺にそう訊いた。


「え、俺?」

「だって、亜美ちゃん先輩のこと好きでしょ?
えーっと、オノデラくん、だっけ」

「え、ええっ」


名前が違うと訂正するよりも、言われた内容に動揺してしまった。

なぜ、長谷川さんに、俺の気持ちがバレてる?



「だってオノデラくん、さっき亜美ちゃん先輩のことすーっごい眩しそうに見てたもん」


俺がそう訊ねるより早く、長谷川さんは答えをくれた。

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