楽園の炎
「あ、レダ。有り難うね。付き合わせちゃってごめん。怪我、大丈夫?」

朱夏は慌てて立ち上がろうとし、よろめいた。
何だか身体中が痛い。

「危ないですよ。わたくしは大丈夫です。擦り傷程度で、大した傷もありませんから」

よろけた朱夏を支え、レダはにこりと笑った。
再び寝台に朱夏を座らせ、頭を下げてさがっていく。

しばらく身体の痛みに耐え、朱夏は、ふと侍女たちに指示を出しているセドナに問いかけた。

「ねぇ、アルはどこに行ってるの?」

「夕星様に呼ばれています。朱夏姫様がこちらに運ばれて、しばらくしてからですから、結構経ちますし、もうそろそろ帰ってくるでしょう」

「ああ、そういえば、わたくしがお兄様のところから逃げ出すのと入れ替わりぐらいに入ってきたわ。・・・・・・わぁ、あの状態のお兄様の相手なんて、可哀相ね」

ナスル姫が、器に入った何やら不気味な液体を、盆に載せて持ってきながら言う。

一体夕星の怒りは、どの程度のものなのだろう。
己のためにそこまで怒ってくれるのは嬉しい反面、次会うのが恐ろしい。

すぐにでも会いたい、とも思うが、会うのが怖い、というものある。
複雑な気持ちに、頭を悩ませていると、ナスル姫が朱夏の鼻先に器を差し出した。
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