楽園の炎
渋い顔で書状をたたみ、夕星は少し考えて、自分の懐にしまった。

「そうだな・・・・・・。セドナの言うとおり、これは父上にお見せしたほうがいい。重臣らの意見に合わせて、炎駒殿の意見も取り入れるべきだ。アルファルドの宰相の意見ということに加えて、朱夏の父親の意見だしな」

良いか? と言う夕星に、こくん、と朱夏は頷いた。

着々と、アリンダの逃げ道が塞がれていく。
結婚という晴れがましい事柄を控えているのに、アリンダのことがあるため、気分は晴れない。

ため息をつき、朱夏は回廊から見える庭に降り注ぐ雨を眺めた。

「そんな顔するな。あいつを何とかしない限り、ククルカンでの安息はないぜ。俺やお前だけじゃない。ナスルも、憂杏だってそうだ。大きく括れば、ククルカン中の女子が、そうなんだからな」

「そうですよ。今は、アリンダ様追い落としの、絶好の機会です。軍を指揮する能力に長けているとはいえ、代わりになる者は、いくらでもおります。そうそう戦もありませんし」

鼻息荒く同調するセドナの言葉に、周りのレダや近衛隊も深く頷く。

「季節と同じですわ。どんよりとした雨の季節の後には、それはそれは華やかな、ククルカンの大祭がやってきます。今年は、夕星様・朱夏姫様に、ナスル姫様・憂杏さんのご結婚と、おめでたいことが重なりますので、今から民は浮かれていますのに。この雨の季節と一緒に、鬱陶しい事柄も、片付けてしまいましょう」

ぽん、と肩を叩くレダに、そうね、と呟きながらも、やはり朱夏の心は、すっきりとは晴れないのだった。
< 704 / 811 >

この作品をシェア

pagetop