楽園の炎
書状に目を通し、皇后は真剣な眼差しで朱夏を見た。

「炎駒様にも、申し訳ないことです。本当にもう、何と言う恥さらしな。彼の者を統括する立場として、心からお詫び申し上げます」

深々と頭を下げる皇后に、朱夏は驚いた。
慌てて、ぶんぶんと両手を振る。

「そ、そんな。どうぞ、お顔をお上げください。ほんとに、何ともありませんでしたから」

皇后は少し微笑むと、傍に控えていたネイトを呼んだ。

「朱夏姫様、この書簡、皇帝陛下にお渡ししてもよろしくて? 陛下は彼の者の親ですもの、わたくし同様、皇子を教育する立場にあります。皇子に対する叱責は、甘んじて受けなければ」

ひいぃぃっと、心の中で朱夏は悲鳴を上げた。
何だかどんどん事が大きくなる。

「あの、か、構いませんけど、その・・・・・・」

アリンダを心配する気はないのだが、もしこれを機に、アリンダまでもが処刑などということになったら、さすがに気が滅入る。
こういうところが、統治者にはなれない甘さなのだろうが。

が、祝い事の前に、あまりに大々的な処刑などはしたくないと思うのは、皆同じようだ。
皇后は、優しく朱夏の髪を撫でた。

「ご心配には及びますまい。皇家の者の結婚式の前に、同じ皇家の血が流れるようなことは、重臣たちもさすがに避けるでしょう」

ただ、周りの者の怒りは、もう並大抵ではないことを、知らしめるべきだから、と、皇后は書状をネイトに渡し、皇帝陛下の元に届けるよう言った。
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