モテ彼×ブキヨウ彼女


言葉が出ないくらいに驚いた。


10月24日。
今日が自分の誕生日なんて、すっかり忘れていた。


「神崎君、なんで……?」


とたんに溢れ出す涙。


神崎君は、優しく微笑むとあたしの頬に手を当て、その涙を指で拭う。


「初めて円香の家に行った日、お母さんに聞いたんだ。
誕生日、一緒に祝いたかったから」


「神崎君……」


見つめ合うあたしたちの瞳には、もう迷いはなくなっていた。


「開けていい……?」


「もちろん」


ゆっくりと包みを開けて中身を取り出す。


入っていたのは、白いくまのぬいぐるみだった。


「可愛い……」


そう呟くあたしに神崎君はさらに微笑む。


「それ、よーく見て?」


「え……?

あ……!!」


くまの耳に向けられていた神崎君の指先。


そこには……キラリと光る指輪があったんだ――。






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