モテ彼×ブキヨウ彼女
そして
色々考える暇もなくやって来た土曜日。
昨晩、緊張し過ぎて全く眠れなかったあたしは、
限りなく昼に近い朝、鏡を見て絶叫した。
「いやぁぁぁ〜!
何この顔…」
例えて言うなら、ニンジンを頬張るウサギ。
目が赤いだけでなく、微妙に顔もむくんでいる。
何度も目薬を点(サ)して、
顔が痛くなるくらいマッサージをしていると、
後ろから、弟の直人が声を掛けてきた。
「姉ちゃん…。
絵画デビュー…?」
「……」
…そう言われるのも無理はない。
頬の肉を両手で挟むあたしは、
まるでム○クの叫びのようだった。
でも、初デートとなれば、他にも悩みは尽きないわけで…。
「はぁ…。
どれにしよう」
今度は、たくさんの服を目の前に並べて、大きなため息をついた。
どれもパッとしない。
今まで、休日ほとんど出掛けてなかったから、
デート用の服なんて…ない。
その時、学校で凪ちゃんが言っていたことを思い出した。
‘デートなんて、普通でいいんだよ’