モテ彼×ブキヨウ彼女
…そう…だよね?
‘普通’でいいんだよね…?
外出する時の普通の格好。
あたしは、部屋に掛けられていたある服に目を向けた。
「これでいっか…。
映画だし」
急いで着替え、軽く化粧をして、階段を駆け降りると、今度は母親に声を掛けられた。
「あら…出掛けるの?
珍しいわね、休日にそんな格好で」
「うん!
友達とね、遊ぶの」
母親は不思議そうな顔をしていたけれど、なんとか誤魔化した。
だって、この街の有名人である神崎君とデートなんて言ったら、
きっとぶっ飛んでしまう。
だから、この場は適当にやり過ごして、あたしは、待ち合わせの場所へと向かった。
待ち合わせは13時に駅前の時計広場。
高鳴る鼓動を押さえ、
ロボットみたいにカチカチになりながら歩く。
5分前に着くと、
そこにはすでに、周りを大勢の女の子に囲まれている神崎君の姿があった。