Hello my sheep
奈緒ちゃんがまた、関島君の顔を覗き込む。



「にしても、起きないねー」

「んー、さっきよりは身じろぎしたりしてるんだけどぉ…関島く〜ん」


あんまり動けないから、ゆさゆさと身体を動かして彼ごと揺らして見る。


「あ、起きた」

「あ、関島君起きた?」

「え?ほんとぉ?」


二人が返事をする前に、ずっと動かなかった腕が身体から離れるのを感じ、体温の低い身体が離れたのがわかった。



「…醍でいい」


少しかすれたような響き方をする声だった。
開口一番の意図を汲みきれなくて私も奈緒ちゃんも返事が出来ないでいると、そのまま彼が続ける。



「苗字で今呼んだろ。気持ち悪ぃからやめろ。で、誰。」


本当に不愉快そうな声。
解放された身体を起こして様子を伺うと、眉根を寄せて睨みあげるように奈緒ちゃんを見ている。
そんなに嫌なのかな。

奈緒ちゃんは特に怖がった様子もなく名前を告げると、関島君、じゃなくて醍君は興味なさそうな返事をしてすぐ欠伸をした。

「醍ちゃんがお世話かけました」


と言いながらさっちゃんがぺこりと頭を下げてくる横を、醍君は通り抜け、こちらには目もくれずに保健室をあとにしてしまった。

お礼を言えだとか、謝って欲しいとか、そんなんじゃないんだけど、ちょっとお話はしたかったかな、と少し空しくなる。

なんだかんだで、私の方はお礼を言いそびれてしまったし。


「何アイツ。社交性なさそー」



奈緒ちゃんの呆れた声に、少し笑ってしまった。
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