【短】同窓会―episode 3―


水城先生につられて、私も笑う。


水城先生の横に立ち、並んで歩いた。


私、柄にもなく緊張している。


「…嶋津先生。
家近いんですね。」


送ると言ってくれた水城先生に家の場所を言うと、水城先生はそう言って笑った。


「…そうなんですか?」


「俺、すぐ先のコーポマンションに住んでるんですよ。
十分近いでしょ?」


…十分近い、か。


「…そうですね。」


「なら、チョコレート取りに行きやすいな。」


そう言ってニヤリと笑う水城先生。
な…なんか聞き覚えのある憎まれ口だ。


「そ、その事はもう忘れてください!」


「はいはい。」


水城先生は思い出し笑いして、そう言った。


「意外と馬鹿なんですね、嶋津先生。」


とも、言った。


馬鹿だな、嶋津。

秋山先輩の笑顔が頭をかすめる。

秋山先輩の言ったことは、あながち間違いではなかった。


でもね。
秋山先輩は、秋山先輩で。
水城先生は、水城先生だよ。


だから、いつでも、叱ってよ。


「…水城先生の馬鹿。」


「嶋津先生もな。」


お互い、目を合わせて笑った。


重なった手を、強く…強く、握った。

反対の腕には、役割を終えたブレスレットが、キラキラ輝いていた。


…完…



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