独身マン
「あ、事務所に2人で入ったらなんか思われるかなぁ~」



確かにそれはイヤだ。 さえはこのまま事務所に入りたくないが、仕方が無い。



「おはようございます」



もー。 正義はさえと2人で声を重ねたのが嬉しくてたまらない。 顔がいっそうにやつく。



そして正義とさえが一緒に出勤してきたため、やはり美紀子が変な顔してさえを見てきた。



その視線が少しいや。 だからなんとなくさえはトイレへ向かった。 案の定、美紀子も追いかけてくる。



「さえちゃん!」



廊下で美紀子はさえの腕を掴み、顔を近づけた。



「ねー。 ちょこっと小耳に挟んだんだけど」



そしてなぜか小声で聞いてきた。



「田端さんと遊んだって本当?」


「え~。 なんで知ってるんですか?」


「いや、本人が言ってたからぁ」



さえは愕然となった。 自分のやったことに後悔でいっぱい。 大げさだと思うかもしれないけど・・・。 顔の中心にしわを寄せ、首を大きく傾けた。



「マジ最悪だし」


「なに? ねね、教えてよ」


「それがチョー! 面白いんですよ!」



笑い話だと思えばかなりのネタにはなる。 こういうとき、黙っているよりも喋ってしまって協力を得た方がいいし。



「一緒にお昼しません? そのときにとっておきの物見せるよ」


「OK。 わかった」



こうしてさえと美紀子はランチをすることに。
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