門限9時の領収書

感嘆に耽るにしては険しい顔で、少年の纏う空気に違和感を覚えた。

真剣な瞳が見つめる先にあるのは、

光り輝く星であって、星ではないように思えるのは洋平の勘違いではないはずで――


友人歴約一年、本来ここは親身になって様子を探るべく場面。

けれども、「なあ、お前は? どーなんだよ」と、

高校生らしいノリで洋平は話題を転換し、雑な雰囲気を作り上げた。

なぜならシリアスが嫌いだから。自己中心的に自分が楽しいテーマしか歌いたくないから。


例えば一週間、夜空の見張りをしたとして、流れ星が見れたとして、果たして夢は叶うのか――

地上では魔法が使えないのだから仕方ない。
時には諦める必要があるはずだ。

いつまでも現実から逃げて空を見上げて何になる?


ちょうど四秒数えた時に、友人の真ん丸な目が自分を見たから、彼はやはり王子様。


『はー? 気持ち悪、何お前そんなキャラ? 保守派なんだけど』と、

雅が失笑するのは親友である洋平に対してなのか、あるいは何か他のことなのか。


 ……。

  、なんか、何。

不信に感じながらも、それに触れないのは、まだ自分が子供だからだ。


「聞かせてよー聞かせてよー産ませてよー聞かせてよー」

レンタル屋さんで借りたお笑いDVDのコントを真似た台詞を言って、

それから洋平は駄々っ子の如く雅の足を揺らしてみせた。

……暗闇は苦手かもしれない。
人の心に酔ってしまうから。


『向こうに合わせるし。彼氏の義務?』と、笑った真意は、

王子様なりのブラックジョークなのか、あるいは本心なのか、

青春に泥酔していた洋平には分からなかった。


二人が歩く背に落ちたのは希望か絶望か――そんなことは誰も知らない。

壮絶な要素は遠慮したい。ゆるさがあれば嬉しい。

仲良し二人は学校を後にした――これで良し。


…‥

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