門限9時の領収書
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マイペースで良い。今の二人だからこそある幸せを大事にしたい。

なかなか花を咲かせない蕾、栄養剤を注いだり日なたへ移したり……説明に従うことが重要?

それだけではなく毎朝話しかけてあげる人になれたなら……少しは心が美しくなるだろうか。


  んー、疲れたな

暗がりに人気はなく、壁の境目がよく分からないから、無灯火は勘弁してほしいと思いつつ、

数時間勤務のアルバイトを終えた洋平は、ゆっくりと帰り道を辿る。


女性子供お年寄りは何かと被害に遭いやすいけれど、

最近は男でも無差別に刺されたり、下手したら殺されたりする恐れがある為、

なんだか淋しいものだと思う夜空の下。


バイブレーションに反応して携帯電話を開くと、《唐揚げ食べた》という文章が浮かんだ。

こんな意味のないメールを少年に送り付けてくる人間は一人しか居ない。

愛しのあの子、髪が長い三流ガールだ。


片手にハンドルを預け、《だから?笑》と返すと始まるやりとり――……

《以上。》と彼女、《え、広げられない笑》と彼氏。


《恋人なら話展開させて笑》

《恋人関係ないな、ムチャブリ笑。ぼくは唐揚げは竜田揚げ派です》

《わたしはねぎソース派です》

《一人洒落んな》

《我が家では普通。》

《ハイセンスアピールすんな》

《え、事実なんです》

《イラっとする笑》

《器が狭いのですね?》

《器は大小じゃん?笑》

《知るか、赤ペンのおじさん笑》


分刻みで繰り返される中身がないメールこそ、自称ギャグセンスが高い人の普通。

他者からすれば白けるばかり、けれども価値がなければない程、二人にとっては特別な内容。

愛の言葉より嬉しい笑い。


《逆ギレすんな笑、彼女からのDV訴える》

《歪んだ愛です、って言う》

《じゃあ俺幸せ》

《き も ち わ る い 笑》

《う る さ い だ ま れ 笑》

馬鹿になれるだけ口角が上がる不思議、洋平は携帯電話を見れば結衣の笑顔が浮かぶ気がした。

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