門限9時の領収書
『普通もう次の段階だよね』
雅が解き放った言葉に重量があるなら、洋平の肩に痣が残るくらいずっしりと乗っかった。
最中にアイスを添えて更に黒蜜をかけた甘味のよう。
甘いのに胃にもたれ、いつまでも悩ませる――
そう、自分たちは世間一般カップルの流れに乗れずオトモダチ区域に滞ったままなのだ。
何かしら陰や過去がない一般的な中学生だとスローが普通だし、スローこそが中学生らしい。
しかしもう高校生。
なんせ洋平の友人は街中でイケてるとされる種族で主に形成されているものだから、
中学時代の仲間周りは一夜限りの恋人を増やし続けたり、付き合うキッカケが行為後だったり、
夢の国に住むお姫様が引くくらいの大人な遍歴を更新している中、
自分は今だに子供らしいお付き合い。
男女の語らいはなく、結衣と洋平二人の間にあるのは友人感覚のネタ話。
楽しい、嬉しい、盛り上がる。スキップが似合う感じだ。
本来ならば艶やかな時を過ごし、しっとりと愛を唱え、永遠に酔える関係を築き上げているはずだというのに。
おかしい。そんな未来が想像できない。余裕で明日の結衣と洋平はスコップを持って砂場で遊べる。
シーツで体を隠す彼女なんて想像できなくて、シーツを被りお化けだと爆笑する姿しか浮かばない。
「それ禁句、俺らムリ。絶対そゆーの向こう笑うから」
『そうなの? へー』
中性的、そう、美容師さんみたいな口調だからか、雅にはさらさらと話しやすくて。
やはり興味がないのだろう、わざとらしくバレンタインの歌の口笛を吹き出した。
逆に話しやすいかもしれない……ガッツリ聞かれると、洋平だって元カノ一人なので小っ恥ずかしい。