“スキ”を10文字以内で答えよ
美術室に戻ってみると、皆いつも通りだった。
先生はやたらと心配してくれ、「傷口の熱が引かなかったら病院に行けよ」と言ってくれたり。
希里を含め、何人かの女子が「大丈夫?」などと声をかけてくれた。
「もう平気。ありがと」
気は動転しまくっているが、傷の痛みは少し引いた。
「良かったぁ……。実依、もう彫刻刀持つの禁止!!危ないから!!」
「そうだよー!いつも授業中ぼんやりしてるのに。美術なんて手ぇ抜きなってー!」
「希里、私小学生じゃないんだから。授業真面目に受けてたらこうなるって、馬鹿みたいだよね、私。あはは……」
さっきの出来事を思い出さないように、いつもよりテンションを少し上げて話す。
先生との事は絶対にバレたくないし、何より自分の事もあまり知られて欲しくない。
こんな時まで自分中心に考えるなんて、嫌な奴。
また始まりそうになった自己嫌悪タイムを止めるように、包帯を巻いた手をきつく握り締めた。