未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

バチンッ


一番前の窓を閉めた音がした。

そして間もなく、キュッキュッって靴音が、あたし達が隠れている教卓のすぐ前を通りすぎていく。

このまま心臓が止まっちゃうんじゃないか──本気でそう思った。

辻之内の香りと伝わってくる温度にクラクラしながら、呼吸もまともにできないほど緊張はピークに達していた。


ガタン


教室のドアが閉まる音がして、


キュッキュッキュッ………キュッキュ……


靴音が遠ざかっていく。

完全な静寂に包まれるまであたし達は、身動きひとつせずそのままでいた。

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