未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「もう大丈夫だよ」
ちょっとだけ低い声が、すぐ側で聞こえた。
「う、うん」
体を離そうとするけど、狭くてできない。仕方ないからゆっくりと教卓の外へ出た。
あたしに続いて出てきた辻之内が、両腕を前に出してそのまま伸びをする。
目の前に立ったその顔を直視できなくて、意識的に視線を逸らした。
そんなあたしに気づいたみたいな彼……でも黙ったまま。きっと、辻之内も感じてるんだ。
だって、たった今まで近づきすぎてたよね、あたし達。
吐息も体温も匂いも、手に取るようにわかるほどだった。
普通に会話を再開するなんて、やりずらいよね?
それにさっきのシチュエーション……どうしても思いだしちゃうのは、やっぱりあの時のこと。