未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「イタイッ」


あたしの言葉に、その手をパッと離した辻之内。


赤くなった手首を見た林田くんが

「なにやってんだよっ」

って、あたしの鞄を掴んで自分のほうへ引っぱった。


引き離された、あたし達。



辻之内の目を見たら、さっきまでみたいに怒ってるんじゃなくて。

とっても悲しい色をしていて。


そして一言、言ったんだ。



「そっちへ行くの?」


「え……?」



別にそんなんじゃないよ。


だけど辻之内からの道は、あたしへは続いていないでしょ?

そっちへ行きたくても、繋がっていないんだよね。



あたしはそのまま前を向いて、辻之内に背中を向けた。


そして彼を残したまま、教室へと向かった。




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