未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
Chapter8

*ラブレター





教室へ行くと今朝のことがちょっと話題になっていて、みんながコソコソと話しているのがわかった。


遅れてやって来たリカも何か言いたげな顔をしたけど、あたしに訊いてくることもなく。


ただ遅刻ギリギリに登校してきた今井さんだけは、あからさまに不機嫌にしてる辻之内の様子に鈍感で。


ベタベタと付きまとって大きな声で話しかけていた。



「ねぇ~ あの幼なじみって、いっつも家に来てるわけじゃないでしょーね?
この前なんて、せっかくお見舞いに行ったのに玄関で追い返されたんだよー、アタシィ」


唇を尖らしてみせるけど、辻之内は顔さえも見なくて。



“この前行った”というのは学校を休んだ日かな。


今井さんも行ったんだ、辻之内の家に。



「まさかずっと日本にいるわけじゃないんでしょー!?」


「ねぇっ?」ってしつこくシャツを摘まんで揺さぶる今井さんに、辻之内は深いため息をついてから。


「帰るよ、もうすぐ」

ってボソッと呟いた。



その答えに、マジでー!!?って喜ぶ今井さん。


彼女の友人達も、それを祝福するみたいに手を握り合って。


その光景に目を逸らし、あたしは黙って外を見た。


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