未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「ねぇ 湊?」


「なに?」


「キスしてくるっていうのは、その……ちょっとは脈アリって思っていいのかな?」


「え」


「ナカジーに『好き』って言われたわけじゃないけど、あたし。
でも全然好きでもなかったら、キスなんてしてこないよね?」



真剣なリカの目。

でもその質問になんて答えたらいいのか、戸惑っていると。


「湊、訊いてもいい?」


まだほんのり頬を染めたままのリカが顔を上げる。


ん?とあたしも視線を向けると。



「湊って、辻之内となにがあったの?」


「えっ?」


「今朝、もめてたでしょ? あたしもちょっとだけ見かけたの。教室でみんなも話してたし。
前に訊いたとき湊、『なんにもない』って笑って言ってたけど、夏休み中になにかあったんじゃないの?」


「……」


「湊ー?」



ごめんね、リカ。

何も打ち明けないで……


でもね、もう終わったんだよ。


なにも始まってなかったのかもしれないけど、でも少なくても、動きだしていたあたしの心だけでも終わらせなきゃ。


じゃなきゃ、つらすぎるから。
< 289 / 406 >

この作品をシェア

pagetop