未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「林田くん?」


「ん?」


「林田くんがそんな顔する必要ないし。それに心配してるようなことはなかったから。

ただねあたし、ナカジーを好きなリカの恋をずっと応援してたんだけど……正直、そんな気持ちになれなくなったかな、それだけ」



あたしの話したことの意味 ―― わかったかな?


彼は「そっか」って短く答えただけで、それ以上もう尋ねてはこなかった。








「今度カラオケ行ったときは、時田の歌が聴きたいな俺」



気まずい空気を変えようとしてるのが手に取るようにわかる。


さっきとは一変して目尻を下げたいつもの笑顔でいっぱい話してる。


本当に優しいんだね。



「えーっ! あたしが歌ったらみんな引くかも。もう誰も誘ってくれなくなるよー」


「そんなことないってっ!! 少なくとも俺は絶対 ――」



勢いよく話してる林田くんが、急に止まった。


話すことだけじゃなくて歩くのも、そして一点を見つめたままでいる。



「急にどうしたの?」



ちょっと笑いながら尋ねたのに、彼の視線を辿ったあたしまで足を止めた。
< 313 / 406 >

この作品をシェア

pagetop