遠い坂道

「てか、まさかあの人が復学するとは思わなかった」


「だよなー。しかも同じクラスかよって思ったし」


「わたし……荒木先輩って呼ぶべきか、いまだ迷ってるー」


「荒木先輩? どうして?」


 引っかかりを覚え、私は尋ねた。


 すると、皆が驚愕の眼差しで私を見てくる。


「真琴先生、まさか知らないのっ?」


「知らないって……何を?」


「荒木君って、あたし達より一年先輩なんだよ」


 え、と私は動きを止めた。


「先輩から聞いたんだけど、荒木さんって何度も暴行事件起こしてたらしいぜ」


「マジで? 俺知らねぇ」


「他校生とかが相手だったから、知らなかったんじゃね」


「後さー……」


 男子達は荒木君の武勇伝を我先にと語っていた。


 教壇近くの席にいる少女達が頭を寄せ合って、囁き合う。


「知ってる? 一年前にあった交通事故も、友達を押して自分だけ助かったって噂だよ」


「えー、最悪。性格悪いね」


「荒木先輩ってカッコイイとは思うけど、こわーい」


「私は別にいいかな。顔が良ければ許す」


「ホントに? 何股もかけてるらしーけど、大丈夫?」


「それは無理」


 彼女達は、アハハと無神経な笑い声を上げた。




 不愉快だ。



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