コイビトは
「でもさ」



リディルルがいきなり切り出したので、俺は顔をあげた。



「その子は、知らない仲じゃなくて、友達なんでしょ? 怖がる事はないじゃない」


ああ、さっきの話の続きか。


切り返しがずいぶん遅かったので、俺は一瞬何の話かわからなかった。


「そうなんだけど…ね。それを考えると、逆に友達すぎて、異性として意識してなかったっていうか」


「好みじゃないの?」


「好みって」


そういう事とも違う気がする。



俺の好みがどうとかは…あまり考えた事はない。


今から思えば、最初に会った時、俺がリディルルに惹かれたのは――異性としてとか、そういうことはともかく――俺が、リディルルみたいなのが好みだったからなのだろうか。



それは、やっぱり異性としてというよりは、音楽とか声が、だと思うけれど。
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