マスカラぱんだ


「葵先生?私だけが寂しいのかと思っていたの。先生は忙しいから、私のことなんか思い出す暇もないのかもって。」

「僕は毎日紫乃ちゃんのことばかり考えていたよ。こうして紫乃を、抱きしめたくて仕方なかった。」


先生は繋いでいた手を引き寄せると、私を温かく包んでくれた。

ああ。嬉しい。

先生の温もりを、こうして感じられることも。

私だけじゃなくて、先生も寂しいと思ってくれていたことも。

何もかもが、嬉しい。

抱き寄せた腕を緩めた先生は、私の顔を覗き込んで涙を優しく指で拭ってくれる。

私はそんな優しさに、瞳を閉じて甘えた。


「紫乃ちゃん。これからはもう少し会える時間が増えると思うから。」


先生の突然の言葉で、閉じていた瞳を開く。

私の瞳には、優しく微笑む先生の顔が映った。


「本当?もっと葵先生と会えるの?」

「ああ、そうだよ。僕は救急を辞めた。だからこれからはもっと紫乃ちゃんと会う時間を作れるから。」


< 174 / 258 >

この作品をシェア

pagetop