マスカラぱんだ


**葵**


結局、今日も忙しかった。

君の様子を見に行く暇もないまま、こんな時間になってしまった。

今は午前0時。

とっくに消灯時間は過ぎてしまっている。

君はもう、眠ってしまっただろうか?

そんなことを考えながら君が移動した特別室に向かい、ドアを静かにノックする。

けれど君からの返事はない。

そうだよな。こんな時間だ。今頃君は夢の国にお出掛け中だ。

眠っている君を起さない様に、そっと特別室のドアを開けて中に入る。

暗がりの中で僕の目に映るのは、ベッドの上の布団が規則正しく上下している様子。

その様子から君が熟睡していることがわかった。

昨日の夜のように、君が痛みを堪え、涙を流していなくて良かったと安堵する。

そっと足音を忍ばせベッドに近付き、君の寝顔を覗き込む。


< 64 / 258 >

この作品をシェア

pagetop