マスカラぱんだ
窓から降り注ぐ月明かりが、君の寝顔を優しく照らしている。
伏せられた君の長い睫毛を目にした自分の胸が、ドキリと音を立てたのがわかった。
何故だ?術後の君の様子を見に来ただけなのに、どうして胸が高鳴る?
君は患者で、僕は医者。
その言葉を自分自身に何度も言い聞かせながら、もう一度君の寝顔を覗き込む。
昨日よりも確かに顔色が良い状態に、ホッと胸を撫で下ろす。
そのまま応接セットのソファに座り、月明かりに照らされている君の寝顔を少しだけ見たら、すぐにこの特別室から出るつもりだったんだ。
本当に、すぐに。