夜獣-Stairway to the clown-
真っ暗闇になった道を気をつけながらも走りつつ、時間がかかることなく学校へつくことができた。

いつもこれくらいの真剣さがあれば、授業も集中して聞けるのかもしれない。

今はそんな平和な授業のことを考えている場合ではないことは、僕の焦った姿を見れば一目瞭然だろう。

「何で早く気づかなかったんだ」

自分自身の洞察力の鈍さに苛立ちを覚える。

もしあそこで手紙が見つからなければさらなる事件が起こる可能性がある。

見つかっただけでも助かる可能性はぐんと大幅アップでよしとする。

だけど、まだそうとは言い切れないところはあるだろう。

まだ何も終わってはいない。

「今何時だ?」

時計を見ている時間も惜しいのだが、9時を回っていてはタイムオーバーになってしまう。

時計を見たところ今の時刻は8時45分である。

「何とか間に合った」

校門を通り下駄箱へと向かうところで一つ気づいたことがある。

また雪坂との待ち合わせ場所を忘れていた。

普通なら校門前が妥当なところだろうなのだが。

しかし、夕子と乾の待ち合わせ場所も気になるところである。

学校のどこかなのだろうけど、時間的に急がなければ一方だけを取るはめになってしまう。

そうこうしている内に、時間は52分を指していた。

いつもより時間が経つのが早いのは気のせいだと思いたい。

「ち!こんなときにダブルブッキングか!」

どうしようもないことに突っ込みを入れ、早く答えを見出さなければならなかった。

乾と対等になるのならば、雪坂の頭脳と力は必要不可欠である。

夕子の命をとるのならばこのまま立ち止まっているわけにはいけない。

その時、玄関のほうの暗闇から何かがこちらへ歩いてくる気配がする。

闇から月明かりがある場所に出てくると姿が露呈する。

「こんばんわ」

その姿は髪が腰の辺りまであり前髪が揃っている。

こっちとしては好都合な人物が僕の前に現れてくれた。

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