夜獣-Stairway to the clown-
「手っ取り早く、二手に分かれたほうがよさそうだ」

「連絡方法はどうするのです?」

「携帯あるだろ?もし会ったとしたらすぐに連絡が取れるようにセッティングしておく」

「多少のロスは生まれますが、そうしたほうがいいでしょう」

番号をすばやく交換すると、僕が二階、雪坂は三階を探すこととなった。


夜のせいか、辺りは不気味な雰囲気を放っている。

何か出て来るんではないかとヒヤヒヤしつつも、未だに暗闇に慣れていない目で必死に状況を探る。

「よくこんなとこを警備の人間は歩けるな」

声でも出しておかないと、前に進めない。

自分は幽霊の類はあまり好まない。

「くそう、誰でもというわけじゃないが、そこにいろってえの!」

月を隠していた雲が晴れてくると、窓から二階を照らし出す。

「ふう、少しはマシになったようだな」

明かりがあるのとないのとでは大違いだ。

「連絡がないということはまだ見つかってないのか」

携帯を見るものの、鳴る気配は0%といってもいいほど静かだ。

こうしている間にも二人の密会が開かれているというのに、見つからない。

自分にも苛立ってはいたのだが、雪坂にも苛立ちを見せ始める。

「ふう、さすがに雪坂に頼んだのに、そんなことを思っちゃいけない」

眉間を人差し指と親指ではさみながら頭を振り、ヒートした熱を冷ます。

奥へ奥へと廊下を歩いていくと、少し先に月明かりとは違う、明かりが見えた。

明らかに人工的な明かりであり、外からではなく教室から廊下へと照らされている。

「まさか、な」

時間を見てみると、9時5分。

時間にすれば丁度よく、場所的にいっても分かりやすい。

一年ではなく二年の教室に集まっている真意は謎だが、手がかりらしきものがそこにあるのなら行くしかない。

雪坂に場所のメールを送ると、待たずに教室のほうへと歩いていく。

雪坂の忠告である冷静という言葉は頭の中から消失していた。

< 115 / 121 >

この作品をシェア

pagetop