夜獣-Stairway to the clown-
夕子の体に数メートル先で『爆発』が起こる。

瞬きすることもできないまま、夕子の全てが肉片となり、肉や骨が物凄い勢いでこちらに飛んでくる。

肉ならまだマシなのだろうが、骨ともなれば硬さが全く違う。

骨は体の足や腕や腹などの所々に刺さり血が噴出してくる。

「ゴフ!」

口からも体の中からこみ上げてくる鉄の味とともに紅いものが噴出す。

「な、ん、だよ。これ」

あっという間の出来事で痛みすら感じれなかった。

夕子が消えるというその出来事に痛みを感じるところでもない。

血を噴出すと共に体の力が抜けていき、立っている力もなくなってくる。

前のめりに倒れうつ伏せで横になる。

薄れていく視界、前を見ればすでにそこには彼女の姿はない。

彼女の一部はすでに自分の体の中に侵入している。

「わけわからない」

今はショックで脳が理解することさえを停止させ、体を動かすことさえを拒む。

「うわあああああ!ゆうこおおおおおお!」

目の前の現実の酷さに叫ぶと同時に大量の血が口から出てくる。

叫ばずにはいられない。

自分が死んだところで夕子は戻ってこないけど、今出来ることはこれしかない。

数回叫ぶと、意識がまどろんでくる。

遠のく意識の中で、僕以外の誰かが叫んでいる声が聞こえてくる。

聞き覚えのある声だったことは僕は知っていた。

意識をギリギリまで保てるところで声の主とは別の人物を思い出し、それ以上保つことが出来なくなると脳が自然に体の全神経をシャットダウンさせたようだ。
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