Frist time
自分の気持ちに正直になるだけで、こんなにも楽になるのかと思った。
今の俺を縛っているものは何もない。
ただ、がむしゃらに玲菜のことを想うだけ。
あいつが俺のことを嫌っていたとしても、そんなの気にしねぇ。
こう思えるようになったのも、すべてが宏のおかげだな。
まじで友達ってのは最高だわ。
こいつが居なくなったら、って考えると、
あれ?そうだ、肝心なことを忘れてた。
「宏!
お前いつここを離れていくんだよ?!」
必死の形相で宏に聞くと、宏は盛大なため息をついた。
そりゃそうだ。
気づくのが遅すぎる。
「やーっと気づいたか。
…年が明けたらここを出るよ。」
悲しそうに、でもしっかりと宏は言い切った。
―――宏の引っ越しまであと1週間と少し。
俺はこいつに何をしてやれるだろう?