男装人生
まずはリビングへと向かう。
この寮で唯一テレビが置いてある部屋だ。
多分そこには居ないだろうが、希夜の部屋に行く通り道だから一応確認しておく。
数人のクラスメイトがくつろぐ中、玲李はきょろきょろと辺りを見回した。
やっぱり、希夜はここには居ないようだ。
「あら、怜悧ちゃん?誰か探してるの?」
すぐにこの場を去るつもりが田西さんに捕まってしまった。
他の子は君付けなのに何故か田西さんは私のことを怜悧ちゃんと呼ぶ。
最初はばれたんじゃないかと、ドキリとしたが他意はないようだからそのままにしていた。
「希夜を探してます。」
「高龍寺くんは部屋か、実家でしょうねぇ。あの子、リビングにはあまり来ないものねぇ~そういえば怜悧ちゃんも部屋に引きこもって、来てくれないわねぇ。」
寂しいわぁ~と呟く田西さんに玲李は苦笑いを浮かべる。
部屋が快適すぎて、リビングにくる目的がテレビ以外見当たらないのだ。
田西さんともゆっくり喋ってみたいと思っていたが、中々その機会がない。
「また、来ますから。」
「そうね。楽しみにしてるわぁ。」
ニコニコ笑顔で"いってらっしゃい"と手を振る田西さん。
玲李が急いでるのを察してくれたんだろう。
いい人だな。
田西さんを知れば知るほど、あの噂はデマに思えてならない。
玲李には田西さんは皆平等に接してるように見えた。
もう少し喋りたい気持ちになったが、希夜を見つけなければいけない。
田西さんに軽く手を振り返し、その場を後にした。
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