男装人生



「そんな言い方ないんじゃな~い?」


「そうよ。あんたは知らないのよ。今朝もだけど。くるみはずっと家でも探しているのよ?いつもぐずってしょうがないんだから。」


「小さいからって見くびらないでよね。圭也と違って素早いんだから。」



いまいち素早いくるみちゃんは想像できないが、お姉さま方は矢継ぎ早に圭也を責め立てる。
くるみちゃんの脱走癖には手を焼いているようだ。


「全寮制の学校なんて入るからいけないのよ。」



怒っていても、口では勝て無さそうだ。

圭也はだんまりだ。



「・・・にぃに、おうち帰ろ?」


くるみちゃんの涙に濡れた訴えかけるような瞳に圭也は戸惑ったような表情をみせる。



「兄ちゃん、頭が良くなったから、たまには帰れるようになったんだ。」



「ずっとちがうの?」


「・・・ずっとは難しいな。」


「やだっ‼ずっとがいいっ‼」



圭也のシャツをギュッと握り離れる様子がない。

お姉さま方もそんなくるみちゃんの様子にため息をつく。


「圭也。今日は帰れない?くるみ、こうなったら頑固だから私達だけで連れて帰るのは難しいと思うわ。」


「・・・分かった。イベント終わって一時何もないから、許可証も取れると思う。怜悧、くるみのことありがとな。部屋の事とか後は任せた。」


「おぅ、任せろ。」


思えばこの時から、圭也の様子がおかしかったような気がする。


帰ってきた圭也は、もういつもの圭也ではなかった。



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