モンパルナスで一服を
「この絵は……あなたが?」

青年がぽつりと呟いた。

青年の瞳の奥では、出たいと言わんばかりの涙の列が作られている。

彼女は少しながらの間を開けると、ゆっくり首を横に振った。

青年の涙に手招きした絵、座り込んだ少年をぼんやりと白い光が覆っている。

それ以外は闇とでも言えよう黒の一色で塗り潰されている。



彼女は、とある芸術家の母。

青年の顔を見た彼女は、今にも複雑な気持ちで満たされようとしている。

こんなにも嬉しいのに虚しい気さえ襲いかかる。
< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop