モンパルナスで一服を
青年の存在に気付いていないのか、女性はまだ話し続けている。

碑に語りかける姿、青年には全く不思議な光景と捉えられていない。

なにせ、この場所が墓地だからだろう。

それに青年自身も先ほどまで墓石に話かけていたところだ。

女性に気にすることなく、なおも青年は絵を見つめている。



自分の隣に黒い影があることに気付いた女性は、ふと後ろを振り返ってみる。

そこに、一滴の涙を流している青年の姿があった。

そして、青年の目に写るもの、それは膝を両腕で抱えて座り込む子どもの絵。
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