幸せの在りか
『息子が大変な事をして申し訳なかった。その償いとまではいかないが、せめてもの親心と思って受け取って欲しい。』という短い手紙と共に、小切手が同封されていた。
今更…。こんなもので私の傷が癒えると思っているのか。こんな…こんな…!
あまりの腹立たしさにその小切手を破ろうとした。
「待てよ。」
「何!?」
「それ、棄てんのか?」
「そうよ。何か文句あんの?」
「まあ、そうカッカせず聞けよ。その金はあいつの親父が稼いだ金だろ?」
「だろうね。」
「だったらそんな事すんな。少なくとも親父さんが汗水垂らして働いた金だろ。人から奪ったものじゃない、苦労して貯めたんだ。お前がその金を粗末にしちゃいけない。」
「じゃあどうしろって言うの?私に与えられた苦痛はこんなもので精算できるわけないじゃない。
第一、あいつの家は資産家だよ。電話一本で100万200万のお金が動くような仕事してんだ。
息子に家が欲しいと言われれば、キャッシュで買い与えるような親なの。」