とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
シモンズは目を開けてフードの男の真後ろに立つ首の無い騎士に目を輝かせた。
『デュラハン!!』
それに気付かないのか、微動だにしないフードの男にシモンズは狂ったような笑い声を上げた。
『その男の首を!!
…殺して!!その男を!!』
大鎌をフードの男に振り下ろすのをシモンズは目を見開いて見ていた。
が、鎌は男の首ギリギリでピタリと止まった。
『どうしたの、デュラハン!!』
『アンナ・シモンズ。
お前は勘違いをしている。
これはデュラハンではない。』
フードの男がそう言うとシモンズは『そんなはずない!』と叫んだ。
『だって…だってあの時だって私を助けてくれたじゃない!』
首の無い騎士はゆっくりシモンズに近付いた。
そして黒い馬の背から降りると彼女の前に立ち悲しそうに見下ろした。
『デュラハン…?』
騎士は外套を翻して一瞬姿を隠したかと思うと、次の瞬間黒髪の男の姿をしていた。
唖然と見つめるシモンズにサリエルは『アンナ』と言葉を発した。
『君はあの時私に助けを求めた。』
『…そんな…』
『デュラハンである私に助けを求めたのであろう?
だが私はデュラハンではない…』
首を横に振り『嘘だ』と繰り返すシモンズをサリエルは悲しそうに見ていた。