とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
『私は堕天使サリエル。
デュラハンではない。』
その一言にアンナ・シモンズは崩れ落ちた。
『お前は何をしているのだ?
魔女と化しているのはなんの為だ?』
『私は…あなたに…デュラハンに…』
『本当にそれだけか?』
サリエルの問いにシモンズは答えらなかった。
『お前のしようとしている事は“復讐”だ、アンナ。』
『…復讐…?』
『そうだ。世の中の男共と兄を重ね、復讐をしようとしている。
それで何を得る事が出来るのだ?』
…兄への復讐…
自分を苦しめた元凶がいなくなり、怒りをぶつける相手が居なくなった。
『誰も…私を必要としてないのよ…
母も父も…私を兄の代わりとしか見ていない!』
誰も私の体に残る…心に残る傷を分かってくれない!!
『両親に告白したか?』
『え?』
『誰にも話さないで居れるほど人間は強くない。
傷付いた心には癒やしが必要なのだよ…アンナ。』
ポロポロと涙を流すシモンズをサリエルは優しく抱き締めた。
悔しい!!悔しい!!悔しい!!
アンナの魂の叫びがサリエルに響く。
『ごめんよ、アンナ…
私には癒せないのだよ…』
その言葉にアンナ・シモンズは力無く泣き崩れた。
『私には傷は癒せない。
だがいつも見守っていると約束しよう…』
だから、ゆっくりお休み…