とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



『私は堕天使サリエル。

デュラハンではない。』


その一言にアンナ・シモンズは崩れ落ちた。


『お前は何をしているのだ?

魔女と化しているのはなんの為だ?』

『私は…あなたに…デュラハンに…』

『本当にそれだけか?』


サリエルの問いにシモンズは答えらなかった。


『お前のしようとしている事は“復讐”だ、アンナ。』

『…復讐…?』

『そうだ。世の中の男共と兄を重ね、復讐をしようとしている。

それで何を得る事が出来るのだ?』


…兄への復讐…

自分を苦しめた元凶がいなくなり、怒りをぶつける相手が居なくなった。


『誰も…私を必要としてないのよ…

母も父も…私を兄の代わりとしか見ていない!』


誰も私の体に残る…心に残る傷を分かってくれない!!


『両親に告白したか?』

『え?』

『誰にも話さないで居れるほど人間は強くない。

傷付いた心には癒やしが必要なのだよ…アンナ。』


ポロポロと涙を流すシモンズをサリエルは優しく抱き締めた。



悔しい!!悔しい!!悔しい!!



アンナの魂の叫びがサリエルに響く。



『ごめんよ、アンナ…

私には癒せないのだよ…』


その言葉にアンナ・シモンズは力無く泣き崩れた。


『私には傷は癒せない。

だがいつも見守っていると約束しよう…』






だから、ゆっくりお休み…




< 308 / 474 >

この作品をシェア

pagetop